香りの旅へようこそ

特定の香りが、ふとした瞬間に遠い過去の記憶を鮮やかに呼び覚ますことがあります。プルースト効果としても知られるこの現象は、嗅覚が脳の記憶を司る部分と深く結びついている証拠です。

「ひとたび口のなかにその味覚がよみがえると、たちまち、あの灰色がかった家の正面玄関や、庭に面した後ろの小さな建物が、現実のパビリオンのように立ち現れてくる」

- マルセル・プルースト『失われた時を求めて』

香りはまた、私たちの想像力をかき立て、目に見えない風景や情景を心の中に描き出します。谷崎潤一郎は、日本の伝統的な空間における「陰翳」と、そこから立ち上る香りの重要性を説きました。

「われわれの思索の材料は、皆ああ云う蔭の中から生れて来た。美も、ああ云う薄暗い蔭をねぐらとして育って来た。」

- 谷崎潤一郎『陰翳礼讃』

文化や物語の中で、特定の香りは象徴的な意味を持ちます。バラが愛を、お香が神聖さを象徴するように、香りは言葉を超えたメッセージを伝える力を持っています。

愛・情熱

神聖・浄化